【徹底解説】退職金制度の種類まとめ

経営者は知っておきたい!退職金制度を導入する際のポイント」の記事では、企業が退職金制度について広く解説させていただきました。こちらの記事はもう少し踏み込んだ内容については触れていきたいと思います。
退職金制度というのは、優秀な人材を確保したり、従業員様の退職後の生活を保障するために各企業が整備する制度ですが、一言に「退職金制度」と言ってもその種類(方法)はいくつか存在します。

それぞれの方法でメリット・デメリットがあるので自社に合った方法選択していくと良いでしょう。今回の記事では退職金制度の作る際に用いられる主要な4つの方法をご紹介したいと思います。

退職一時金

退職一時金というのは読んで字の如くなのですが、従業員様が退職される際に会社が渡すお金(場合によっては物品)のことを指します。退職金の積立については、民間の生命保険を活用するケースが多いです。

「退職一時金」というのが、もっとも一般的な退職金制度なのではないかと思います。支給する金額や支給対象条件などついては、企業側が策定する就業規則において定められます。退職金の支給額の算出方法については、以下の4つのいずれかが採用される形になります。

給与連動型退職金制度

退職金の支給額が、退職前の給与水準に基づいて決定される制度を「給与連動型退職金制度」といいます。

給与連動型退職金制度では、退職時に支払われる退職金の額が、従業員の退職前の最終給与に基づいて算定されます。具体的には、退職前の月収や勤続年数に応じた基準に基づき、一定の割合をかけて算出されることが多いです。また、企業によっては、勤続年数に応じて退職金の支給額が段階的に増加するという方式を採用している場合もあります。

従業員にとっては、長期間にわたって勤め上げた会社を退職する際に、一定の経済的な補償を受け取ることができますし、企業側にとっても従業員を長期間雇用することで、企業の安定性を確保することができます。

ただし、給与連動型退職金制度には、退職前の給与水準によっては、高額な退職金が支払われる可能性があるため、企業にとっては財務的な負担が大きくなる可能性があります。

退職金別テーブル型退職金制度

退職金別テーブル型は、企業が退職金を算出するための基準として、勤続年数や平均年収などを表にまとめたものです。具体的には、退職時に支払われる退職金の額を、企業側があらかじめ設定したテーブルに基づいて算出することになります。

例えば「勤続10年未満の場合には1か月分の平均年収、勤続10年以上20年未満の場合には2か月分の平均年収、勤続20年以上の場合には3か月分の平均年収」といったように、退職者の勤続年数に応じて、一定の割合をかけた金額を支給することが一般的です。企業によっては退職金の最低額や最高額が設定されている場合もあります。

退職金別テーブル型を採用することで、企業にとっては退職金を事前に設定することができ、財務上の不確定性を低減することができます。また、退職金の支払いにかかる時間や手間も減らすことができます。一方で、従業員にとっては、個々人の退職前の給与水準には応じられないため、公平性に欠ける可能性があることがデメリットです。

勤続年数定額型退職金制度

勤続年数定額型の退職金制度は、従業員の勤続年数に応じてあらかじめ決まった一定の金額を受け取る制度です。勤続年数が長ければ、より多くの退職金が支払われるように設計されます。

例えば「勤続10年の場合には300万円、勤続20年の場合には600万円」といったように、勤続年数に応じた一定の金額を退職金として支払うのが一般的です。勤続年数に応じた退職金の金額は、企業によって異なりますが、従業員にとっては、勤続年数が長くなるほど退職金が高額になるため、安心して長期間働くことができるというメリットがあります。

企業側にとっては、従業員が退職する際の財務上の不確定性を減らすことができるというメリットがあります。また、退職金の支払いにかかる時間や手間も少なくて済むため、管理コストが低減できることもメリットのひとつです。
ただし、従業員にとっては、勤続年数に応じた一定の金額しか支払われないため、退職前の給与水準には応じられないことがデメリットとして挙げられます。

ポイント累積型退職金制度

ポイント累積型の退職金制度は、勤続年数と業績成績などに応じて、ポイントを積み上げていくことで退職金を支給する制度です。勤続年数に応じた基礎ポイントに加えて、企業の業績や従業員の成績などに応じた追加ポイントを付与することで、より多くのポイントを獲得することができます。

例えば「勤続年数に応じて基礎ポイントを付与し、さらに業績成績などに応じた追加ポイントを付与することで、ポイントを積み上げて退職金を算出する」といったように、ポイントを積み上げて退職金を算出することが一般的です。

企業が業績によって支払う退職金の金額を変動させることができるため、経営状況に応じた退職金制度を構築することができます。また、従業員にとっても、自身の成績に応じたポイントが付与されるため、働きがいを感じることできる点がメリットです。

ただし、ポイント累積型の退職金制度は、ポイントの算出方法やポイントの有効期限などが複雑であるため、従業員が理解しにくいというデメリットがあります。また、企業側がポイントの付与基準を明確に設定していない場合、不透明な退職金制度となってしまうこともあるため、従業員とのコミュニケーションがとても重要になります。

中小企業退職金共済(中退共)

中小企業退職金共済による退職金準備は、共済の仕組みを利用して外部機関から従業員に直接退職金を支払う仕組みのことです。中小企業に所属する従業員が、雇用保険に加入している期間に応じて、共済組合に加入することで退職金を支給する制度であり、共済組合には、都道府県労働局や中小企業基盤整備機構が中心となって設立したものがあります。

中小企業退職金共済に加入することで、中小企業に所属する従業員が、定年退職や雇用契約満了によって退職した際に、一定の退職金を受け取ることができます。また、共済金は、国が保証するため、共済組合が破綻した場合でも、一定額までの支払いが保証されるため、安心して加入することができます。
会社が拠出した退職金準備のための積立金については、経費として損金計上できるなどの税務上のメリットもあります。
一方で、会社が拠出した退職金原資が外部機関にあり、従業員に直接支払いされる仕組みのため、仮に問題を起こした従業員にも退職金が支払われてしまうというデメリットもります。

企業型確定拠出年金(DC)

企業型確定拠出年金とは、DC(=Defined Contribution)制度とも呼ばれており、企業が従業員のために設立する年金制度の一つです。企業が毎月一定の金額を拠出し、その運用益に応じて将来の年金を得る制度です。
ちなみに、2017年に導入された「iDeCo(イデコ)」は企業型確定拠出年金とは異なり、個人が積立原資を拠出する個人型確定拠出年金です。

企業型確定拠出年金の特徴としては、以下の点が挙げられます。

  • 企業が従業員の拠出額に対して一定の拠出する
  • 企業が拠出した資金に対して、従業員が運用を行う
  • 拠出額は将来の年金額に反映されるため、長期的な視点での運用が重要である。

企業型確定拠出年金は、従業員が将来の年金を得るために、自己責任で拠出を行う制度であり、将来の年金額は、運用成績によって変動するため、一定のリスクが伴います。企業は、従業員に対して適切な情報提供を行い、運用方法やリスクについての説明を十分に行うことが求められます。

確定給付企業年金

確定給付企業年金は、企業が従業員に対して退職後に定期的な年金を支払うために設立する制度のことです。企業は、従業員の退職金代わりに、一定の年数勤務した場合に、将来にわたって一定額の年金を支払うことを約束します。

企業が従業員に対して確定給付企業年金を提供する場合、企業は従業員の年金基金を設立し、毎月の給与から一定額を控除して基金に拠出します。基金には、企業の拠出額の他に運用益などが加わります。従業員が退職した際には、基金から退職後も定期的に年金が支払われるようになっています。

確定給付企業年金の支払われる年金額は、従業員の勤続年数や給与水準に応じて算出されます。
具体的には、企業が従業員に約束する年金額を計算するための基準利率や算定率があります。これらの基準利率や算定率は、年々変動するため、企業は定期的に基準利率や算定率を見直して、従業員に支払う年金額を調整する必要があります。

確定給付企業年金は、従業員が退職後に安定した収入を得られるため、従業員にとって魅力的な福利厚生制度の一つです。
一方で、企業側は、年金基金を運用することで運用リスクを負うことになり、基準利率や算定率の変動などにより、将来の支払いリスクを抱えることになります。
近年では、金利の低下などにより運用がうまくいかない年金基金も増えており、運用については従業員自らが責任を持つ「企業型確定拠出年金」へとシフトする企業も少なくありません。

まとめ

退職金制度は、会社側が従業員にを大切にする「想い」を形にしたものであると考えています。
しかし、その想いも形にする方法を間違うと「こんなはずじゃなかった・・・」ということにもなりかねません。
今回ご紹介した退職金制度の種類については、どれがベストということはありません。それぞれの企業様で最適は方法というものがあるはずです。
まだ退職金制度を作られていない企業様は、ぜひこの機会に真剣に退職金制度の導入については検討してにみてはいかがでしょうか?

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