経費を作れる!?生命保険を活用した従業員退職金の積立

従業員様を雇用しながら会社を経営していく上で、従業員満足度(ES)を上げていくことは経営者にとって大きな使命の一つではないでしょうか?
そのために様々な企業様で取り組まれているのが「福利厚生の充実」ではないでしょうか?
(参考記事:福利厚生制度は必要か!?メリットとデメリットを徹底解説

その福利厚生制度の中でも中核をなすのが退職金制度ではないでしょうか?
退職金制度をしっかりと整備することで、従業員様の将来をより安心なものにするお手伝いができますよね。退職金制度を作る上で活用される方法一つが生命保険なのです。生命保険を活用するとどのようなメリットがあるかはこちらの記事で解説しておりますのでよろしければご覧ください。

今回は、上記の記事で触れている「税制優遇」について触れていきたいと思います。

生命保険は税金面での優遇が多い金融商品

生命保険は、他の金融商品と比べても税制面で優遇されていると言えます。
個人でご加入いただいている生命保険の場合は、「生命保険料控除」という制度があり、年間で支払った保険料の額に応じて(上限あり)所得控除され、所得税額を抑えることができるというものです。これは、株や投資信託などにはないものですよね。

法人でご加入いただく生命保険の場合は、更に税制面での優遇が活用できます。
解約返戻金(保険解約時に戻ってくるお金)の無い、いわゆる掛け捨てタイプの生命保険の場合は、基本的には全額損金参入(経費)にすることができます。これによって、法人としての利益を圧縮でき法人税を安くするということができます。

では、解約返戻金があるタイプの場合はどうでしょうか?
保険商品や契約条件によって税務処理が変わってくるのですが、今回は退職金積立のための生命保険がテーマですので、退職金積立でよく活用される「養老保険」についての税制にフォーカスして解説していきたいと思います。

養老保険の掛金が経費として認められる要件

養老保険の掛金が経費として認められる(損金参入できる)には、いくつかの要件があります。
その要件というのは「法人税基本通達 9-3-4 養老保険に係る保険料」で明文化されています。
上記の通達には以下のように表現されています。

養老保険に係る保険料

9-3-4 法人が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする養老保険(被保険者の死亡又は生存を保険事故とする生命保険をいい、特約が付されているものを含むが、9-3-6に定める定期付養老保険等を含まない。以下9-3-7の2までにおいて同じ。)に加入してその保険料(令第135条《確定給付企業年金等の掛金等の損金算入》の規定の適用があるものを除く。以下9-3-4において同じ。)を支払った場合には、その支払った保険料の額(特約に係る保険料の額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭55年直法2-15「十三」により追加、昭59年直法2-3「五」、平15年課法2-7「二十四」、令元年課法2-13により改正)

(1) 死亡保険金(被保険者が死亡した場合に支払われる保険金をいう。以下9-3-4において同じ。)及び生存保険金(被保険者が保険期間の満了の日その他一定の時期に生存している場合に支払われる保険金をいう。以下9-3-4において同じ。)の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額は、保険事故の発生又は保険契約の解除若しくは失効により当該保険契約が終了する時までは資産に計上するものとする。

(2) 死亡保険金及び生存保険金の受取人が被保険者又はその遺族である場合 その支払った保険料の額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

(3) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合 その支払った保険料の額のうち、その2分の1に相当する金額は(1)により資産に計上し、残額は期間の経過に応じて損金の額に算入する。ただし、役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする法人税基本通達 9-3-4 養老保険に係る保険料

この通達によると「加入対象者」「契約形態」について定めがあります。
上記の赤線を引かせていただいた部分が養老保険を使って退職金積立をする際の規定になります。
詳細は以下のようになっています。

加入対象者の要件

「役員又は使用人」が加入の対象者となるのですが、上記の通達によると

役員又は部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該残額は、当該役員又は使用人に対する給与とする。

との記載があります。
「役員又は部課長その他特定の使用人」というのは、その会社で働く役員含めた社員を指すのですが、ここでのポイントは「特定の」という部分です。
これはどのような意味かというと、ある特定の従業員だけ退職金積立のために保険加入した場合は、この損金ルールは適用されないということです。
つまり、加入対象の要件を考えるときには「全員加入」というのをしっかりと意識するということですね。

契約形態の要件

保険契約をする際には、「契約者」「被保険者」「死亡保険金受取人」「満期保険金受取人」というのをそれぞれ設定する必要があります。この設定方法についても、上記の損金ルールを適用する場合には注意が必要です。
上記の通達には

死亡保険金の受取人が被保険者の遺族で、生存保険金の受取人が当該法人である場合

という記載があります。これを元に契約形態を整理すると以下のようになります。

この契約形態にすることで福利厚生の仕組みとして認められるようになり、半分損金にできるというルールが適用できるようになります。

退職金規定の要件

退職金規定については、上記の通達では明記されていないのですが、より確実に損金として認められるようにするためには、退職金規定はしっかりと整備しておきたいですね。

まとめ

企業が提供する福利厚生として、かなり重要な役割を果たすのが退職金制度です。
その退職金については、計画的な積立が必要です。その手段として生命保険を活用することはとても有効な手段です。積立をしつつ従業員様のご遺族に対する保障まで提供できるので、従業員様、またそのご家族に提供できる価値は大きなものでしょう。
まだ退職金制度を作っていない・・・という経営者様は、ぜひこの機会に検討されてみてはいかがでしょうか?

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